缶バッジ1個15元、市場は1689億元

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「穀物」と書いて「グッズ」と読む

中国の大都市のショッピングモールには、フロアがまるごとキャラクターグッズ店で埋まっている場所がある。ケースの中にあるのはほとんどが小さいもの。親指の爪ほどのブリキの缶バッジ、手のひらに乗るアクリルスタンド、色紙、ぬいぐるみのキーホルダー。これを中国では谷子と書いてグーズと読む。英語の goods を音だけ借りた言葉で、当てられた漢字はたまたま穀物を意味する字だった。

その中でいちばん多いのが缶バッジ。中国語では吧唧(バージー)と読む。これも音を借りた言葉で、出発点は日本語の「バッジ」、つまり英語の badge だ。丸型と四角型が基本で、ほとんどがブリキ製。裏にピンがついていて、どこにでも留められるようになっている。

グッズを買ったり交換したりする人たちの輪は谷圏(グーチュエン)と呼ばれる。中国メディアの説明では、その中心は学生の未成年層だ。2025年12月には、中国の語文誌「咬文嚼字」がその年の流行語トップ10に谷子を選んだ。1年に10語しか選ばないリストだから、そこに入った時点で趣味の輪の外まで届いた言葉ということになる。

値札は小さく、合計は大きい

値段は思ったより優しい。新華社の報道では、谷子のほとんどは100元、約13.9ドルを超えない。いちばん多い缶バッジは1個15元くらい。もちろん限定品やレアな絵柄は1000元を超えることもある。この落差から「プラスチックの金」というあだ名がついた。

その小さな値段が積み上がると桁が変わる。中国の市場調査会社アイメディアリサーチの集計では、谷子市場の規模は2023年の1201億元から2024年に1689億元へ伸びた。1年で40パーセント以上の伸びだ。同社は2029年に3089億元まで届くと見ている。ネット側も一緒に膨らんで、抖音では谷子関連の話題の再生が100億回を超え、小紅書では20億回を超えた。

カバンが「痛い」はほめ言葉

缶バッジを買ったら、次の問題はどこに付けるか。答えはだいたいカバンだ。カバンの前面を同じキャラの缶バッジで隙間なく埋めたものを、日本では痛バッグ、略して痛バと呼ぶ。中国では痛包という。

なぜ「痛い」という字なのか。日本で先に生まれた言葉は痛車だ。車体をキャラクターの絵で覆った車を指す俗語で、見ていて痛々しいという意味から来たとされる。イタリア車を略した「イタ車」と語感が重なる洒落だという説もある。日本語版ウィキペディア自身、由来には諸説あって定かではないと書いている。

痛バのルールはシンプル。同じ絵柄を複数集めて規則的に並べるか、推し一人で前面を統一するか。透明な窓がついた専用バッグも売られている。窓の中に缶バッジを入れて閉めれば、雨でも濡れない。そうやって作ったカバンを背負って出た瞬間、前面がそのまま展示ケースになる。

始まりはアニメのファンダムだったけれど、いまはゲームのキャラクターもアイドルのフォトカードも同じ前面に並ぶ。谷子という言葉自体、漫画・アニメ・ゲームから出た派生商品をまるごとまとめる言葉に広がった。つまりこの遊びの条件はひとつだけ。何個買っても痛くないくらい、物が小さくて安いこと。

貼る順番がそのまま腕前

実際にいちばん時間がかかるのは、買う瞬間じゃなくて配置だ。缶バッジの直径はだいたい決まっていて、バッグの窓のサイズも決まっている。だから何個が何列で入るかを先に計算することになる。大きい缶バッジを真ん中に置いて小さいのを囲む配置、色を交互に置く配置、同じ表情だけを一列に並べる配置。どれも見え方がまるで違う。

この感覚、実はパズルと同じだ。マスの数は決まっていて、ピースの順番を変えるだけで絵をつくる。DoYouBoxのスライドパズルでマスを動かす感覚をつかんだり、ドットモンスターで先に図案を描いてみたりすると、実物の缶バッジを動かす前に配置が見える。

箱に貼ってあるべき確率表

谷子を買う方法には、しばしばくじが混ざる。どの絵柄が出るか分からない箱を買って開けるやり方だ。ここでお金が漏れやすいので、中国は2023年にルールをつくった。市場監督管理総局が出したブラインドボックス営業規範の指引はその年の6月7日の会議で通り、売る側が商品の種類、抽選ルール、商品の分布、限定数、当たる確率、価格帯を目立つ形で公示するよう定めている。裏側で確率をいじるのも禁止だ。

未成年の条項も一緒に入った。8歳未満には盲盒を売れず、8歳以上には保護者の同意を確認しなければならない。抽選の時間や金額の上限、回数の上限を設ける仕組みも推奨として書かれている。だから箱の前で確率表が見つからないとき、それは見落としじゃないかもしれない。